vol.2 夕暮れが僕のドアをノックする頃に


 地元の駅を出発して名古屋に着くと、すぐに大阪行きのバスに乗り換えた。最寄りの空港はセントレアだけど、セントレアは就航路線が少な過ぎるからいつも関空発の飛行機に乗る。

 

 2013年7〜8月の東南アジア一人旅は、10万円だけを握り締めて身ひとつで「大冒険」をしに行ったはずだったのに、到着するやいなや体力も精神力も早々に使い果たしてしまい、途中で少し高めの快適な宿に泊まったり、陸路移動に疲れて飛行機を利用したりと自分の中ではあまり納得の行く旅ではなかった。それを貧乏旅行とは呼べないし、呼びたくもなかった。その反省も踏まえて、今回は記念すべき初の本格的貧乏旅行、しかもアフリカ大陸ということもあり、乗り継ぎの利便性や全体の所要時間は無視して、途中で空港泊することになってもいいからとにかく安いルートで行ってみたかった。発着地を変えてみたり予約サイトの言語を変えてみたり(スカイスキャナーの裏技)、あらゆる方法を駆使して日本からケープタウンまで最も安く行けるルートを探したところ、関空からエミレーツに乗ってドバイを経由するよりも、【関空→香港→ドバイ→ケープタウン】のように、一旦香港までLCCで飛び、香港でエミレーツに乗り換えてドバイを経由する方がトータルで数万円安くなることが分かった。確か片道5万円くらい。

 

 駅からバス停までの間にあるコンビニで飲み物とレモン味のピュレグミを買い、バスの運転手に名前を告げて座席を確認し、荷物を預けた。小さなスーツケースが並べられたトランクに、65リットルのバックパックをドカンと置く瞬間がたまらなく好きだった。3時間ほどバスに揺られて梅田のバスターミナルに着くと、今度は空港行きのバスに乗り換えるために20分ほど歩いた。名古屋とはまた違った、大阪特有のジメジメと湿った生ぬるい空気が肌にまとわりついて足取りが重くなる。それでもやはり、小綺麗な格好で身を包んだ人々の群れに紛れて、どデカイリュックを背負い死んだ魚の目をして歩くというのは何とも言えない爽快さがあった。

 

 関空に近づくにつれて空も段々と暗くなってくる。りんくうタウンと関空とを結ぶ連絡橋を渡っているときにちょうど夕日が見えた。大阪湾の水面に反射していてとても幻想的だった。間もなくの到着を知らせる哀愁漂うメロディがバス車内に流れ出す。それを聴きながら、その幻想的な光景をなんとなしに眺める。心臓がギュッと締め付けられて無性に寂しくなった。ブルーハーツの夕暮れを聴いた。