2022 0415 2221

 

 『XXさんとこの息子さんの奥さんがね、「お宅の梅の木の枯葉がうちのベランダまで飛んで来るので、業者さんを呼んでおきました」と言ってね、後から業者さんが来てね、こんなふうに梅の木を切ってしまったんだよ。お母さんが大事に育てていたハーブも一緒にねぇ…』よほどショックだったのか、帰省中に何度も何度も、全く同じ声の調子で私に聞かせてくれた。


 時折何かを思い出したかのように急いで椅子から立ち上がると、ゆっくりと窓の近くまで歩いて行き、一呼吸置いてから両手で一気にレースカーテンを開ける。しばらくそこに留まって畑を眺めていた。そして「お庭に蝶々がねぇ、3羽来たよ」とひとこと呟くと、またゆっくりと歩いて椅子に腰掛けた。帰省中、この一連の行動を何度か繰り返した。蝶の数は2羽だったり3羽だったりした。


 「今年は梅の花が綺麗に咲いたよ」「これだけ花が咲いたら、今年はたくさん梅がなるかもしれないから、今年こそ漬けなきゃねぇ、朱里ちゃんはうちの梅干しが大好きだったからねぇ」と、私が帰省する度に必ず梅の話をしていた祖母は、雑草の生い茂る畑のど真ん中に立つ、葉も花も実も成らない2本の大きな木を見て何を思うんやろか。


 私「この木ってもうダメになっちゃったの?」

 祖母『うーん、どうだろうねぇ。でもね、左の木の奥の枝のところから新しい枝が生えてきててね、そこんところに、ちょびっとだけ葉っぱが生えてるから、きっと"何年も"すれば、また花を咲かせるようになるんじゃないかなあと、私は思ってる』


 人が老いていく様子を目の当たりにするのは嫌だな、いつまでも「死」から目を背けて生きていたいもん