2019 0312 0655

 

 田舎の真夜中。窓を開ければ虫の音、閉めれば無音。音のない世界。最近、布団に入ってもなかなか寝付けない。眠くならないわけではない、ちゃんと眠い、なのに眠れない。暗闇の中で目を閉じると「お前には何もない」という声が聞こえてきて不安になる。そうかぁ私には何もないんか、確かにここ数年間は単に規模のデカい逃避行を繰り返していただけだったもんな、それにしても何もない状態がこんなにも怖いものだとは知らんかった。住む場所も、ずっと働いてきた大好きな場所も、恋人も、何もかもを一気に失って心ここに在らず状態が続いた後、「あとは這い上がるだけだ」と気持ちを切り替えてナニクソ精神でひたすら受験勉強に専念したにも拘らず、志望大学にも落ちた。「もう一年受験勉強するんか」と考えると、どうしようもなく怖くなってくる。24歳、20代前半の最後の年を無駄にしてしまうんじゃないか、とかくだらんことを考えてしまう。

 

 あの時ああしていれば今頃こうだったかもしれない、と、いくつものパラレルワールドを思い描いてはあれこれと後悔してしまう。しかしどれもこれも誰に相談するでもなく自分で勝手に進んでしていることだから誰のせいにもできない。だから今日もひとりで不安な夜を乗り越える。「あいつのせいで、」と責任の所在を他所に丸投げ出来たらどんだけ楽やろか。

 

 目を瞑るとどんどん鼓動が早まっていくのが分かる。「人ってこういう風に、<よし今から死のう>、とか意気込んで死ぬんじゃなくて、なんかこう知らん間に、特に意志もなくふらっと、自分でもよく分からんうちに死んでるんかな」とか考え出してしまって、もしかしたら自分はいま限りなく死に近い場所にいるんじゃないかって思えてきて怖くなる。

 

 恐怖で身体が強張る。身体を起こして部屋の明かりをつける。パソコンを開いて適当に動画を見る。カーテンの向こう側が白んでくる。新しい朝が来た、今日も夜を乗り越えた。テレビの音や電子レンジの音、食器を洗う音。朝の生活音が聞こえてくる。涙が溢れてくる。ストレスで喉が締まって、ほとんど息のような声で「ごめんなさい」を連呼しながら布団にくるまって泣く。泣き疲れていつの間にか眠りに着く。昼過ぎに目が覚めて、寝ぼけ眼で参考書を開く。どうなるか分からんけどもう一年やってみる。

 


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